中島敦 ~李陵・山月記~

中島敦の後期作品「山月記」「名人伝」「弟子」「李陵」4編をおさめた文庫本。


33歳という若さで没した中島敦の作品の評価は高く、漢語の知識を用いた硬派な文章のなかで叙情的な一節が光る、淡白かつ滋味な書き味が魅力です。

死後に高く評価された文筆家のひとりで、苦悩や病に臥せりながらも筆を動かし続けた中島の想いを文章から感じ取ることができます。


個人的には、この4編を読んで、中島敦は大好きな作家となりました。

おすすめです。


「山月記」

高校国語の教科書にも載る作品。とあるプライドの高い役人が、ある日気が狂って山へ飛び出し、虎になってしまう。そこへ通りがかった旧友とかわす言葉とは。

「名人伝」

とある男が弓の技術を身につけるため、さまざまな達人に師事する物語。ついに行き着く、達人のその先とは。

「弟子」

孔子と、その弟子である子路との関係を描いた物語。中島自身が子路を愛していることが伝わる筆致で、温かい気持ちで読むことができる。話はさまざまに展開し、その都度おこなわれる孔子と子路の対話が愛おしい。子路のモデルは、中島の伯父である中島斗南だと言われている。

「李陵」

中島の最高傑作だと言われている作品。中国、漢のいち軍吏である李陵が北伐へ遠征するものの、奮戦かなわず捕虜になってしまい、そこから展開していく人間関係を描いたもの。読者を引き込み続ける展開の多さに対し、内容がまったく引けをとらない濃厚な一篇。読後感が非常によい作品。

本を読みたくなったら

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