男脳がつくるオトコの行動54の秘密

生後6か月の時点で、女児は誰にでも目を合わせてじっと見つめる行動を示すが、男児は動くもの、幾何学的な形、物体の角や先端に目が惹きつけられる。男の子が親の警告を無視して興味のあるものに引き寄せられていく傾向はこの時点から始まっている。1歳児を対象にした、おもちゃを目の前に置き、触れてはいけないという警告をして触らせないようにする実験では、男の子は女の子にくらべて2倍の量の警告を必要とした。


男の子の取っ組み合いの数は女の子の6倍である。若い男の脳にとっては、勝利することがすべてである。それは喧嘩の勝ち負けだけでなく、おならやげっぷの音の大きさなど、あらゆることについてである。


思春期の男子の脳にはバソプレシンとテストステロンが奔流のようになっており、攻撃性と性欲の回路が常に点灯している。同性同士の力関係や性的な興味が頭の中を占めているのだ。彼らは良い成績を取ることができないのではなく、そのことに興味がないだけである。また、テストステロン受容体が視交叉上核をリセットして体内時計がずれるため、男子の就寝時間と起床時間はどんどんとずれていく。学校というシステムと思春期男子のライフサイクルがあっていない。また、快楽による報酬の中枢がほとんど無感覚になっており、男子を興奮させるにはもっと強烈な恐怖やショックが必要となる。学校にいる彼らは反抗心からつまらなさそうにしているのではない。彼らは本当につまらないと感じている。


女子の脳にはエストロゲンが、男子の脳にはテストステロンが上昇することで聴覚にも差ができてくる。男女に音楽と白色雑音(ザーというノイズ)を聴かせたところ、女子は音楽と白色雑音の両方に激しく反応したが、男子は音楽には反応を示していたが、白色雑音の方にはまるでなにも聴こえていないかのように無反応だった。脳の遮断システムが自動的に白色雑音を遮断していた。これは実は胎児の段階(テストステロンをはじめに多く浴びるとき)から始まっており、男子の脳には望まない雑音や反復性のある聴覚刺激を阻害するようなシステムが作られている。あらゆる警告を、男子は無視しているのではない。実際に聴こえていないのと同じ状態なのである。男子には、くどい説教や女子のファッションや噂話などが、ガヤガヤとした雑音にしか聴こえていない。


交配相手探知モードに入っていたライアンは、ニコールが顔をあげてくれることを願いながら、ゆっくりと近づいていった。望み通り彼女が視線をあげ、ふたりの目が合うと、彼はわずかに顎をあげ、微笑みながらさらに一歩近づいた。ニコールは首をかしげ、微笑み返しながらも、かすかに身を引いた。それは「あなたに興味はあるけど、まだ警戒している。」という合図だった。交配脳でそれを正しく読み取ったライアンは、微笑みを浮かべたまま一歩後退した。ライアンは雑誌「GQ」の表紙に載るような端正な顔立ちではなかったが、十分に魅力的で無害に見えた。彼の笑顔と茶色の目に警戒心を解いた彼女は、広がっていく笑みを隠すように恥ずかしげにうつむいた。

科学用語ではこうした媚態を「接触準備」という。こうしたやり取りを得意とする男性こそが、「接触準備」という競技で高得点を獲得するという。


以下、ちいさな知識をご紹介。

・男性のだ液にはテストステロンが含まれており、女性の性欲中枢を刺激する。

・若い男性の40%が8~15回の膣への突きで絶頂する。

・女性はオーガズムの後にオキシトシンとドーパミンの作用により相手と抱き合ったりしゃべったりしたいと思うが、男性はこれらが睡眠中枢に作用するので、急激に眠くなる。

・男性は他者の感情に惑わされずに認識力と分析力をもって問題解決にあたる。

・男女にさまざまな表情の写真を見せる実験をおこなったところ、男性は意識が働き始める2.5秒の時点で顔面筋の常道的な反応が鈍くなった。たいして女性は、2.5秒後からはより一層感情を表情に出すようになった。これは、男性は感情を強く持つがすぐにそれを隠しており、女性は感情を実際に感じている以上に誇張して表現していることを示している。



胎児期から老年期までの男性のホルモンと情動に関する知識を時系列で解説してくれる本。文量はそれほど多くないが、内容が濃すぎて、半分も紹介できなかった。

ぜひ自分の手に取って読んでみてほしい。非常に面白い一冊である。また、「女は人生で三度、生まれ変わる」という同著者の女性版もおすすめである。

本を読みたくなったら

蔵書を軽く紹介しています。

0コメント

  • 1000 / 1000