民族という虚構

「世界が合理的に進行するならば、時間は消失する。そして、合理性からの逸脱が意味を生む。」

「人間は他者を根元的に必要とする他律的存在である。しかし、この他律性を自律性として感じとる他に人間の生きる術はない。」

「境界が曖昧になればなるほど、境界を保つための差異化ベクトルがより強く働く。人種差別は異質性の問題ではない。その反対に同質性の問題である。差異という与件を原因とするのではなく、同質を差異化する運動のことなのである。客観的な距離が問題なのではない。対人関係あるいは対集団関係における距離というものは、もともと社会心理的な過程で生み出される現象だ。」

「異質性よりも同質性の方がかえって差別の原因になりやすい。」

「同一性と変化は本来両立しない。同一性とはそもそも存在しておらず、社会的に生み出される虚構である。」

「人間は合理的動物ではなく、合理化する動物である。」

「社会制度は人間が決めた慣習にすぎないが、その根本的な恣意性が人間自身に対して隠蔽され、さも自然の摂理であるかのようにら表象されて初めて正常に機能する。」

「文化は様々な規範・価値を通して我々の思考・行動に制限を加える。その意味において、人間は自由の限定を受けるが、しかしまたその社会規定性のおかげで、日常生活の様々な場面での行為が可能になる。社会制度が我々の思考や行動に制限を加えなければ、相手にも好意を示すためにどのような表現をすべきかの決定さえ困難になる。また相手の方としても示された表現がどういった意味を持つのか判断できない。生物学的所与から多大な自由を獲得しつつも安定した生を人間が営めるのは、その補償作用として社会が人間の自由を制限するおかげなのである。」


本を読みたくなったら

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