フランクル 知の教科書
ホロコースト生還者であり、オーストリアの精神科医、心理学者でもあるビクトール・エミール・フランクル氏が題材。彼の人生と、その時々の主な意見がまとまっている人物史本。
いわゆるロゴセラピーと呼ばれる手法を確立しようとした人物。彼は「人には意味志向がある」と確信する。人間は日々の仕事から人生まで、あらゆることに意味を求め、それが適わないときに心に不調をきたし健全な生活を送れなくなることが多い、としている。
また、実存志向も重要な人間心理のひとつとし、自身があらゆることに対して「主体的に関わる姿勢を持つこと」を健全な生き方として重視する。ひとは、どんな状況においても状況に流されることなく、状況を選択し、どのような心持ちでいるかも選択できる。それによって状況に意味が生まれ、前向きさを取り戻すことができやすい、というのである。
また、彼はフロイト的な内省による精神の自己説明を試みる療法を強くは支持しない。そこでは「どのようなトラウマを感じているか、またそのトラウマは過去のどのような経験からきているか。」と自身の心理を深掘りしていく。しかし大抵の人間にはなにかしら心当たるような経験があり、最終的には「親に充分に愛されなかった自分」という被害者イメージができあがることになる。
これは人生に対して受動的な姿勢を持ちやすくなることを意味する。彼は、過去ではなく未来へ志向することを強く勧めている。
「人生を問うているのではない。人生に問われているのだ。」という言葉は有名である。
我々は、人生をどのように有意義で幸福なものにするか、という主題に深く絡みつかれ、結果不幸にも疲弊したり満たされない思いを抱えて生きている。ヒトは幸せになりたいと願うと、幸せかどうかが常に気になり、周りの事象に振り回されはじめ、結果として必ず幸福になれない、という逆接的な性質を持っている。
それよりも「なすべきことはなにか」を重視し、自分の人生において「求められていること」に注目せよ、と言う。人生に問うのではなく、運命として人生があなたに問うていることはなにか。課しているものはなにか。今まさにあなたによって解決・遂行されることを待ち望んでいることはなにか。
そこに目を向けたとき、あなたを待っていた未来がきっとある、と言う。
三大心理学説のうちのひとつとされるフランクル。彼の言葉の一端に触れてみては。
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