科学の発見
素粒子分野でノーベル物理学賞を受賞したワインバーグ氏による、人類の科学史を時系列とともに追っていく作品。
氏の科学史の講義ノートをもとに著されたというものだが、それにしては圧巻の解説・考察量であり、古代ギリシャの科学哲学時代から現代に至るまでの、特に天体理論について相当に詳細な分析を行っている。
分析の視点が「現代科学手法から見ての批判」であるため、これがウィッグ史観(現代の価値観をもとに歴史を批評すること)だとして論争になった。ただしこの本はそもそもが「現代の科学手法に至るまでの因果の分析」をテーマにしているため、この視点で歴史を振り返ることは前提条件として読まなければならないように思う。
この本を読むことで、人類がいかに長い時間”客観性”という性質がもつ科学における価値を感じることがなく、また客観性の定義において「何に対して客観的であるか」という視点が現在の形に変わるまでにどれだけ時間がかかったを感じることができる。
これは「誰にどういう納得感という形で説明できると理解したことになるのか」という価値観の変化の歴史とも言える。また、実験科学と理論科学の長い関係性、また技術が科学とどのように関わってきたのかを詳細に眺めることのできる一冊である。
ただし相当骨太な本なので、読むのにある程度の覚悟がいる。(笑)
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