三体・第一部
世界を席巻した中国発のSF小説、その第一部である。
物語は文化大革命の目の向けられないようなグロテスクな時代から始まり、地球外部にある意識的な存在を感じさせる宇宙的スケールまで展開する。
超常現象などの圧倒的SF風味を存分に味わわせてくれながら、一人の人間の心理的葛藤や人間関係などを描く丁寧な文学性、政治的な話題をできるだけ中立に描写する作家性、あらゆる謎をダイナミックにドラマ性を以って読者に体験させる構成力、その全てが現実世界とは異なる、異世界として現実感を持って成立しており、その根源にはこの現実がある。確にこの世界に立脚した三体の異世界が、本の文面から立ち上ってくるのである。
SFを読んだことのない人でも楽しめる、むしろ入門としてとても良いものと言える一冊だろう。
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