利己的な遺伝子(増補新装版)

発売から40年経った今でも色褪せることのない、生物学における必読の一冊。


本書は生物の根源的な生存の目的が、その個体の身体的な本体ではなく、その個体を構成する細胞全てが共有する「遺伝子」であるという視点に立ったものである。

生物学における群淘汰や利他的行動は本質的には視点として間違っており、それらや生物学的な諸現象のほとんどは、個体の持つ遺伝子を存続させようとする利己的な行動の表象的な側面に過ぎないとする。


さらに、ひとつの個体が持つ遺伝子は、ゲノムの1セットとして捉えるのではなく、ゲノム中における各遺伝コードを1ユニット(単位)として捉えるべきであり、その1ユニットごとに生存のために他の遺伝子や対立遺伝子と生存競争の中にいるとする。1ユニットが生き残るために、他のユニットと共存したり協働する方が遺伝子1ユニットの生き残りに有利に働く場合があり、その場合は複数の遺伝子があたかも集団行動をとっているように表面的には見える、としている。


我々だけでなく全ての生物の、遺伝子(DNA)以外の部分は、遺伝子が生存するために製造された戦略的な機械であるとし、その生存戦略は次の世代に遺伝子をリレーすることにどれだけ良いフィードバックを与えられるかという形で、自然淘汰という現象によって評価される。


これらの論説の根幹を補強するために、既存の論を吟味しなおしたり、性別の起源を考察したり、ゲーム理論を用いて生存戦略を考え直してみたりするなど、1ページごとにワクワクする内容が凝縮されていて、読んでいてページを捲る手が止まらない。

生物学の知識がなくとも理解することができるように書かれているうえに、知識のあるものは興奮が止まらないという優れた一冊である。

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